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まさか、そんな風に周りを混乱する行動を取るとは……二人の言動はありえない。
「大樹。もう何も言わないで……」
もし、こんな事が幸隆に伝わったら、試合に影響が出るかもしれない。
錯乱して怪我でもしたら……そう思うと、イルは隣に座る二人の発言に心臓が落ち着かなくなる。
「なら、キスして下さいよ」
「え……?」
「今ここで、キスして下さい」
「そ、そんなの無理っ……ンッ!?」
そう言ったのに、大樹はイルのその言葉を聞いていなかったかのように有無もなくキスをして来た。
その行動にイルは驚き、ハッとなって大樹の胸板を力一杯グッと押した。
「なんで……こんな……っ」
イルは涙目で唇を拭い、笑っている大樹を睨み付ける。
「あー、可愛い。昔から、先輩の涙目になった表情にムラムラしてたんですよ」
「酷い……最低……」
「でも、もう変な事は言いませんよ。約束しまーす」
「っ……」
大樹はそう言うと、顔をグラウンドに移し、試合に視線を移した。
けれど、イルは試合をする幸隆の顔が見れず、ずっと下を向いて下唇を噛むしか無かった。
幸隆が頑張ってる最中に、自分は他の男とキスをしてしまった。
不本意である事には違いないけれど、それでも、自分に隙があった事には間違いは無い。
(ごめ……幸隆っ……)
幸隆以外の男とキスをした。それが、イルの心を苦しめる。
大樹とのキスで、今まで保っていた純な部分が汚れてしまったような気がしたのだ。
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