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こんな事、幸隆には知られたく無い……そう思うと尚更、幸隆の方が見れなかった。
試合は幸隆が入っていた赤チームが勝利した。でも、イルは幸隆の高校最後の試合を全く見ずに終わってしまい、いつの間にか終わっていた状況になってしまった。
隣に座る愛永はそんなイルの変化に気付き、大丈夫? と心配そうに聞いて来る。
「イル、体調悪い? 顔色悪いよ?」
「え……? あ…大丈夫だよ。ただ、試合に集中し過ぎて……」
そう答えると、愛永は「なら良いけど……」そう言って少しだけ納得してくれた。
「幸隆ぁー! お疲れー!」
試合が終わり、選手全員が挨拶をしに観客席へと近付いて来た。その中に勿論幸隆はいて、ルイは選手達と会話をしながら近付いて来る幸隆に気付くと、大きく手を振ってここにいる事をアピールしていた。
それに気付いた周りの選手達は、そんなルイを見て幸隆を囃し立て始めるのだった。
「おいー! 何だよあの子! 幸隆のこれ(彼女)か?」
「違う」
「嘘だー。あんなに両手振ってお前の事呼んでるんだぞ! 健気だなぁ。つーか、可愛い!」
選手達はルイの容姿を見て頬を染め、幸隆の代わりにルイに向かって手を振り返していた。それを見て、ルイも満面の笑みでまた大きく手を振り返す。
「ヤバッ。可愛過ぎる。誰なんだよあの子! 紹介しろよ!」
「イルの双子の姉だよ」
「イル君の? あー、確かに似てる! でも、イル君とはまた違う感じで可愛いなぁ。俺、お姉さんの方が好みかも」
「あ、そう……」
幸隆はチームメイトの身体を離し、スタスタとルイではなくイルの方へと向かって来てくれた。
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