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「……ンドロイドが、まさか……人間を……?」
振り返ると、博士は苦しそうに胸を押さえて倒れているのにも関わらず、薄く笑っていた。
近寄り、その様子を確認する。
撃たれたのは左胸。弾は貫通している。出血量。意識レベル。瞬時に計算する。
「博士。貴方は五分後に亡くなります。まだ知識はありませんが、再起動すればいいですか?」
「……人間も、そうできたらいいのにね」
博士はあは、と笑った。
私はその顔に小さく、冗談です、と返す。
博士はそんな私の表情を、震えながら見上げた。
「……ゼロワン……。君は、再起動をしてからとても人間臭くなったね。それこそ、僕が求めていたものなんだ。どれだけ長い期間開発しても、君はアンドロイドの域を超えなかったのに……。あいつらに捕らえられ、余計な僕の記憶を抹消するために再起動をかけられ……あのとき、無理やり車で目覚めさせてしまったせいかな。その失敗が、逆によかったのか……。……僕は、人の心を持つアンドロイドの開発……禁じ手の、研究をしていたんだ」
人を補助するためのアンドロイドは開発可能だが、アンドロイドは人の心――または人の心のようなもの、を持ってはいけない。
それはこの国で定められている法律だ。アンドロイドが自由に振る舞うようになれば、人間に危害を加える可能性がある。
しかし、この高度な研究は隣国では当たり前に進められている。この国では公に人の心を持つアンドロイドの研究などできないが、結局は隣国に対抗するため研究せざるを得ない。
「『人の心』……私の履歴に、五歳の女の子の姿があります。あの子が、私のイメージであり、モデルでしょうか?」
私が尋ねると、博士は頷いた。
「……僕は、別に戦争をしたくて禁じ手の研究をしていたわけじゃない。僕の……僕の子供を、蘇らせたかった」
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