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そこで、履歴は途切れている。
しかし最後に満面の笑みを浮かべていた、彼女の笑顔は脳に焼き付いたように離れない。
「ゼロワン、君はどれだけ移植を試みても、アネモネのような人間らしさは無いただの高性能なアンドロイドだったけど……」
博士は震える手をこちらに向けた。
私はその手をそっと握る。指の間から、ポタポタと血が落ちる。
「……ゼロワン。君が生前……そして今でも欲している、誕生日プレゼントをあげよう。識別番号じゃない。君の本当の名前だ。『アネモネ』。君の名前は、アネモネだ」
私は小さく繰り返した。
アネモネ。
私の名前。
「アネモネの花言葉は、『君を愛す』……。アネモネも、再起動前のゼロワンも、今の君も……僕は心から愛していた。僕の生きる希望だった。……そばにいてくれて、ありがとう」
博士の心臓は、そこで停止した。
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