01 -ゼロワン-

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   *  TOKIO第32都市。二台のワゴンを撒き、私たちはなんとか『家』に到着した。  私の記憶は再起動によりリセットされているはずだが、やや不具合があったせいでほんの少し履歴が残っている。  そう、ここは博士と私が暮らした研究所。  遠くに白い小さな建物が見えるが、そこまでは植物園となっているようで、背の高い木々と花が道沿いに植わっている。 「……博士。これは何でしょうか」  私はその庭先にあった赤い物体を指差す。データを遡っても何故かエラーとなり、名称が出てこない。博士は私の顔を見やると困ったように首を傾げる。 「ああ……データが飛んでるんだな。やっぱり車で揺らして起こしちゃったのよくなかったね。ごめん。すぐにチェックしよう」  私は手を引かれ、研究所に入った。  白く無機質な空間を視認した瞬間、脳が『懐古心』という言葉を引き出した。  
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