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博士は苦笑いを浮かべている。
「……僕の話、聞いてた?」
「理解しました。ですが、優先順位の問題です」
私はカプセルの外に出た。
『懐古心』『懐古心』『懐古心』……何処を見ても、この単語が出てくる。
傷だらけの白い柱を見つける。旧時代の頃に好まれた、子供の背の丈に合わせて傷を付け成長を記録するものだろう。その傷は徐々に上に伸び、私の胸元辺りで止まっている。身体が成長しないアンドロイドと博士だけの研究所で、不可解な現象だと感じる。
またひとつ、『懐古心』という言葉が現れる。
「政府の奴らに捕まったら、君はおもちゃにされるよ。それよりも誕生日プレゼントの方が大事? まあいいけど……いつの間に、そんな人間みたいなことを言うようになったんだ」
「私の中の履歴は、プレゼントを第一優先としています」
私は一通り部屋を一瞥すると、外へと出た。
「あ、ちょっと……!」
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