01 -ゼロワン-

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   私は植物園を散策した。  広大な土地。それはこの『家』を隠すためでもあり、私がかつて植物を好んだからでもあると履歴が伝える。  確かにこの色とりどりの木や花の中を歩くと、『安心感』という単語が頭を駆け巡る。『安心感』『安心感』『安心感』……何処を見ても、この単語が羅列される。 「ゼロワン、駄目だ。こうしている間にも奴らが迫っている。早く逃げないと……」  博士が後ろから走ってくる音がする。心拍数上昇。  私は振り返り、口を開いた。 「私はここを出たくはありません。それよりも博士、誕生日プレゼントを」  そう言うと、博士は表情を固くした。  博士の頭の中で今、何かが高速で回転している様子だった。  それはアンドロイドの私よりも速度は遅いと思われるが、彼のI.Qの高さからいって、並大抵の速さではない。今彼は私を見つめながら、あらゆる可能性を考えて、ひとつの結論に達しようとしている。 「もしかして……実験は、……成功していたのか? ゼロワン……」  博士の呟きは私に話しかけているようで、独り言だった。  その瞬間、背後に四名の人間の気配がした。  
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