9/11

134人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
ゆっくりと階段を上っていく。 神社の周辺はにあまり建物が無いので、月明かりを頼りに階段を上る。    ・    ・    ・ 階段を上りきると、私は引き寄せられるように桜の目の前まで歩み寄る。 桜を見上げてみると、月明かりに照らされて淡く光っていた。 幸「綺麗・・・」 静かな神社に私の声が響きわたる。 私は桜という花をあまり好きではない。 ・・・だって、すぐ散ってしまうもの。 ・・・とても儚くて、悲しく。 まるで・・・ サァーーー まるで・・・誰にも気づかれなかった。 もう失ってしまった・・・ 私の心(・・・)のようだから・・・ サァーーー どのくらい桜に見とれていただろうか。 日が傾き、いつの間にか辺りは薄暗くなっていた。 幸「早く帰らないと・・・   私は完璧でないといけない」 自分自身に暗示(・・)をかけるようにそう呟いた瞬間。 ーーヒラッ 桜の花びらがゆっくりと散り、風も吹いていないのに私の周りをグルグル回り始めた。 幸「なっ、何?!」 私はこの摩訶不思議な出来事についていけず、そのまま立っていることしか出来なかった。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

134人が本棚に入れています
本棚に追加