プロローグ

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『さようなら』 作中のえみりが短くそう告げる。僕は彼女がまるで本当に目の前にいるかのような錯覚に陥った。 彼女は僕が創ったキャラクターに過ぎないはずなのに。鼻筋が整った顔立ちに蠱惑的な瞳。少女のような幼さの中にもどこか艶やかさを感じる。 この二人の物語は決して幸せな結末を迎えない。 二人の馴れ初めから始まり、幾月もの間に様々な出来事が起こるが、それは話にボリュームを持たせるために書いただけで、大筋にそこまでは関わってこない。 もっとも、ラストに向けた伏線はある程度忍ばせているので一概に無駄とも言い切れないのだが。 二転三転しつつも順調に思えた二人の生活は、えみりが抱えていた秘密を彼が知ってしまった故に一気に壊れ始める。 知らなければ幸せだったこと。それを知ってしまった時の絶望感、閉塞感。 この小説全体のテーマを表すならきっとそんな感じなのだろう。幸せな日々からの急転直下、どん底で終わる結末を強く印象づけたい。
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