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僕の前を横切った彼女は、間違いなく蓮見えみりだった。そう、あの蓮見えみり。 「西ちゃん、どうした。ぼーっとして」 田淵のこの言葉がなければ、僕はいつまでも深い思考の海を彷徨っていたに違いない。なぜ。どうして彼女が目の前に。 「ああ、なんでもないよ。ちょっと考え事をしていただけ」 そうやって誤魔化すが、きっと僕の顔はこの上なく分かりやすい作り笑顔だったのだろう。 「どうせしょーもないことでも考えてたんだろう。今はほら、今日の段取りについて考えろよ」 久々の合コンとあってか、いつもより饒舌な口ぶりで田淵はそう言った。 合コンにそこまで段取りがあるものかと僕は首を傾げた。 「ほら、さっさと行こうぜ。青だよ」 目の前の信号が青に変わったことすら気づいていなかった。 駅前から呉服町通りをまっすぐ行ったところにあるスクランブル交差点は今日も多くの人が行き交う。 夏の終わりが目の前に迫り、長袖シャツの人も増えた。
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