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「なあ、田淵。田淵は僕が書いた小説を全部読んだんだっけ?」 「いんや。そもそも俺は活字嫌いだからな。西村大先生の作品はそうだな……、なんていったっけ。あのファンタジーっぽいやつぐらいしか読んでないな」 「ああ、あれか」 高一ぐらいの時に書いた作品だ。 僕が作品名を言うと、田淵はそれだそれだと手を打った。 「そうそう。あれは中身が漫画っぽかったから読んだかな。それ以外は分からん」 違う。あの作品に蓮見えみりは登場していない。そもそも、僕の頭のなかで勝手にイメージした容姿だ。 田淵が蓮見えみりというキャラクターを知っていたところで、目の前を通り過ぎた彼女が蓮見えみりであるということを認識できるはずがない。 「なんだなんだ急に。読者傾向でも分析しようってのか?」 田淵が訝しむような顔でこちらを見る。
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