12人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
その1
「……という訳で、我が不知火家は先祖代々……」
厳かなんやろう拝殿内に、親父の言葉だけが響き渡る……と言えば、なんや大きな神社かと思われがちやけど、実際はそんな事もない。
歴史を感じさせる古めかしさから確かに神聖な雰囲気はあるけど、響き渡る程広くもないし、天井も高くない。
子供の頃から慣れ親しんでるせいで、そんな所で正座してても緊張感なんか微塵も感じへん。
だいたい朝の決まりとはいえ、子供の頃から毎日毎日同じ様な説法を聞かされ続けたら、流石にもー飽きた。
いや、とっくの昔に飽きている。
「こら、龍彦 !ちゃんと聞ーてるんか!?」
だから俺の態度に多少だらけた雰囲気が含まれていたとしても、それは仕方の無い事や。
「あー……ちゃんと聞ーてるよー……ってゆーか、毎朝毎朝、同じ事しか言わへんやん」
「あほっ! 大事な事やから、お前には何べんも言わなあかんのや」
俺のお決まり文句に、親父は「大事な事なので二回言いました」ならぬ「何度でも言います」を返してきた。
まー、それも仕方がないこっちゃ。
正直な話、この歳になってまで聞かされたくないわ。
最初のコメントを投稿しよう!