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―――こんな“幼稚な”話なんか。
「ええか、お前はまだ見たことないかもしれんし、感じた事もないか知らんけど、この世の中には確かにおるんや。“化身”っちゅーもんがな」
「……はいはい……わかってますよー……」
実際はわかってない。
いや、信じられへん。
見た事も無いものを信じろってのは、流石に無理がある。
俺だって、そんなに意固地やない。
俺には見えへんだけで“この世の物で無い者”はいてるのかもしれへん。
でも、見えへんもんは見えへんし、知らんもんは知らん。
「なんや、その返事は! お前はこの神社の跡取りなんやから……」
しまった! 俺の言い方に、親父の説教魂が燃え出してもーた!
しかし残念やな、親父よ。
もう時間切れや。
「お兄ーちゃーん! 学校やでー!」
俺の救世主、妹の神流から、今朝の説法を終了する言葉が告げられた。
「悪いな、親父。この話はまた明日やな」
「……ったく、こいつは……」
立ち上がりながらそう言った俺に、親父はぶつくさと愚痴をこぼしてる。
流石の親父も、目に入れても痛くない程溺愛している神流からの終了宣言は無視でけへん。
「んじゃー、親父。行ってきます」
俺は親父をほっぽって拝殿を後にした。
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