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母屋にある俺の部屋に戻りカバンを持って玄関から外に出ると、我が愛しき妹、神流が俺を待っていた。
「……もー……遅いやん」
少し待たせてもーたみたいで、神流はご機嫌斜めや。
まー実の兄がこー言うんもなんやけど、少し拗ねたような顔も神流には似合ってて可愛い。
「あー……悪い悪い……親父がしつこくてなー……」
「そんなもん、適当に聞き流しとけばえーねん。お兄ちゃんはほんまに要領悪いなー……」
俺の言い訳に、直ぐ様神流が言葉を被せてきた。
確かに要領よく“聞いたフリ”でもしとけば、長い説法に無駄な説教が追加される事はない。
俺はそれがどーにも下手で、神流はそれがひじょーに上手い。
何に対してでも、要領も愛想も良い所が親父のお気に入りな部分でもある。
「ほら、お兄ちゃん! もー行くで! 利伽姉ちゃんが待ってるし」
そんな事を考えとったら、呆けた顔にでもなってたんやろか。
神流が眉根を寄せたような怪訝な顔で、俺を下から覗き込んできた。
こーゆー仕草がナチュラルに出来るところも、神流の持つ魅力の一つなんやろなー……。
もっとも、誰がやっても似合うっちゅー訳やないんやろーけど。
「そやな。朝から小言言われるんは、親父だけで十分やな」
俺がニッと笑ってそう言うと、神流もそこは同意らしくニコッと笑ってクルッと俺に背を向けた。
中学に入学してから伸ばすようになった綺麗な黒髪は、神流の動きに会わせてフワッと舞って、朝の光を受けてキラキラと輝いていた。
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