その2

2/3

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
 山裾をぐるっと回り込み―――ちゅーても、直径二百メートル程の小さい山やけど―――いつもの待ち合わせ場所で、いつもの相手と合流する。 「あっ! 利伽(りか)姉ちゃんー!」  幼馴染みの利伽を見止めた神流が、手を振りながら駆けていく。  そんな後ろ姿を見ながら、俺は速度を速める事なく二人の待つ場所へと歩み寄った。 「利伽姉ちゃん、おはよう!」 「おはよう、神流ちゃん」  麗しい少女二人の、爽やかな朝にちょーお似合いな挨拶が交わされてる。 神流が仔犬の様に駆け寄っていった相手は、“隣山”の「八代(やつしろ)神社」神主の長女で、俺と神流の幼馴染みにもなってる「八代利伽」や。  贔屓目に見て、利伽も可愛い。  昔から伸ばしている美しく長い髪が特徴で、ほどけば太腿の辺りまである髪は、今はポニーテールにしているけどそれでも背中に掛かるほどや。  容姿も端麗で、今は可愛いが先行してるけど元が“あの”おばさんの娘。  将来は間違いなく美人(べっぴん)さんになるやろう。  スタイルもえー。  高校生活も二年目に突入ともなれば、少女も女性に様変わりするんやろなー……。  ぶっちゃけた話、俺は利伽に惚れてるかもしれん。  高校二年生ともなれば、思春期真っ只中や。  隣に住んでる幼馴染みの可愛い女の子に初恋を奪われたって、そらしゃーないってもんやで。  でもそれはちょー極秘や。  理由は色々あるけど、兎に角隣同士家族ぐるみの付き合いとなったら決定打を出すのにもタイミングが重要や。  勿論、利伽の気持ちもある話やけど。  そんなこんなでヘタレな俺は、当分この関係でえーと思ってる。 「お……おはよう……神流ちゃん……」  そして、今まで利伽の陰に隠れて気配を消してた真夏(まなつ)が、オドオドオズオズと神流に挨拶した。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加