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「大丈夫なんやったら、とっとと行こか」
「……うん……」
しかし俺が掛ける言葉にだけ、なんでか元気が含まれてへん。
なんや!? 俺か!? 俺が原因か!?
顔にも言葉にも出せへんけどそんな事を考えとったら、神流が半袖シャツの裾をクイクイッと引っ張ってきた。
「ちょっと、お兄ちゃん。“昨日の夜”利伽姉ちゃんに何かしたん?」
しかし神流も同じ事を考えてた見たいで、小声で俺に聞いてきた。
もっとも小声っちゅーても、余裕で利伽の耳に入る程の音量やったけど。
俺には全く身に覚えがない。
“昨晩”も普通やった。
これは早急に確認して原因をハッキリさせんと、俺が在らぬ冤罪で神流に嫌われてしまう!
―――何度も言うけど、俺はシスコンやない。ほんまや。
俺達は同時に真夏の方を見た。
知ってる確率があるとすれば、弟の真夏やからな。
俺ら兄妹に揃って視線を向けられて、真夏はあからさまに顔を逸らした。
真夏、そらー僕知ってますってゆーてるようなもんやで。
それを確認して、俺と神流は顔を見合わせて頷きあった。
今ここで真夏を問い詰めても、どーせ口は割らん。
口数が少なく内気なくせに、みょーに強情な真夏は、答えられない事には頑として口を割らんのや。
しかも今、この場には利伽がおる。
この姉弟の力関係はよー知らんけど、だいたい想像はつく。
姉の前で、姉の秘密を喋る訳がない。
まー大した事ないんやったらそれで良し。
今ここで聞く必要もないやろ。
情報収集は“今夜”神流に任せて、俺らはいつも通り、学校へ向かった。
―――雰囲気はいつもとだいぶ違ったけどな。
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