その3

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「大丈夫なんやったら、とっとと行こか」 「……うん……」  しかし俺が掛ける言葉にだけ、なんでか元気が含まれてへん。  なんや!? 俺か!? 俺が原因か!?  顔にも言葉にも出せへんけどそんな事を考えとったら、神流が半袖シャツの裾をクイクイッと引っ張ってきた。 「ちょっと、お兄ちゃん。“昨日の夜”利伽姉ちゃんに何かしたん?」  しかし神流も同じ事を考えてた見たいで、小声で俺に聞いてきた。  もっとも小声っちゅーても、余裕で利伽の耳に入る程の音量やったけど。  俺には全く身に覚えがない。  “昨晩”も普通やった。  これは早急に確認して原因をハッキリさせんと、俺が在らぬ冤罪で神流に嫌われてしまう!  ―――何度も言うけど、俺はシスコンやない。ほんまや。  俺達は同時に真夏の方を見た。  知ってる確率があるとすれば、弟の真夏やからな。  俺ら兄妹に揃って視線を向けられて、真夏はあからさまに顔を逸らした。  真夏、そらー僕知ってますってゆーてるようなもんやで。  それを確認して、俺と神流は顔を見合わせて頷きあった。  今ここで真夏を問い詰めても、どーせ口は割らん。  口数が少なく内気なくせに、みょーに強情な真夏は、答えられない事には頑として口を割らんのや。  しかも今、この場には利伽がおる。  この姉弟の力関係はよー知らんけど、だいたい想像はつく。  姉の前で、姉の秘密を喋る訳がない。  まー大した事ないんやったらそれで良し。  今ここで聞く必要もないやろ。  情報収集は“今夜”神流に任せて、俺らはいつも通り、学校へ向かった。    ―――雰囲気はいつもとだいぶ違ったけどな。
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