503人が本棚に入れています
本棚に追加
最近、裕幸のシフトと亮の業務時間が重なる日に、ふたり示し合わせて一緒に帰ることがあった。
夏の間はともかく、すっかり冷え込んできたこの頃、陽が沈むのも早い。暗い夜道を裕幸をひとりで帰すのが心配で、亮の方から言い出したことだったのだが…。
「あの…遅くなっちゃったからお腹も減ってるだろうし、何か食べていく?奢るよ」
「食べたい!けど…、いつもいつも奢ってもらうのも…」
「君は学生なんだから、そういうことは気にしないの」
一応、亮の業務終了時間は決まっているものの、予定通り終わるとは限らない。いくら待ち合わせがあるからといって、仕事をほっぽり出すわけにもいかず、結果として裕幸を待たせてしまうことも多かった。寒い中バス停で待たせるのも酷だから、と近くのファミレスで待ち合わせることになり…、こうして夕飯をともにするのも、もう何度目だろう。
「いつも待たせちゃってごめん。いっそ一緒に帰るの止めた方がいいのかなぁ」
一緒に帰る、とは言ってもほとんどバスの中だから、そもそもあまり護衛にもなっていない。自分を待つことで余計に帰りが遅くなってしまっては本末転倒ではないだろうか。
メニューを裕幸に渡して、ため息をつく。
肩を落とした亮の姿に、慌てて裕幸は反論してきた。
最初のコメントを投稿しよう!