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「そんなことない、一緒に帰りたいよ。オレ、待つの全然イヤじゃない。むしろ待ってる間も幸せだし!」
「しあわせ?」
確かに、どれほど遅くなってしまっても、出迎える裕幸はいつも上機嫌だった。それは、まさしく裕幸の言葉通り“幸せそう”にも見えたが、なぜ待たされることが幸せなのか、亮には全く理解出来ない。
いまいち意図が掴めず首を傾げると、裕幸は一瞬目を泳がせた。
「えと、…ほら、亮さん晩飯奢ってくれるし。オレ、今日もそのつもりで食べたいもの決めておいたんだ」
とってつけたように付け加えて、店員を呼ぶボタンを押す。その言葉に偽りはなかったようで、すぐにお目当てのメニューの載ったページを探し出した。
「これ、十一月の新メニューの、海老グラタン!」
満面の笑みで指し示す裕幸につられて、亮も笑顔になる。
「そっか。温かくて美味しそうだね。僕もそれにしようかな」
少しだけ違和感を感じたが、にっこりと笑う裕幸を眺めていると、たいした問題じゃない気がしてきた。
それにこうして裕幸と来るようになってから気づいたのだが、亮はわりとこのファミレスの雰囲気が好きらしい。オレンジがかったやさしい照明の下で会う裕幸はいつも機嫌良さそうで、亮も自然と明るい気分になれた。
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