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一応、がまんしようとしているのは分かるが、面と向かって笑われると面白くない。
自然と低い声になった亮を前に、裕幸は顔半分を手で覆って笑いを堪えようとしている。
「眼鏡かけてるから視力悪いって、亮さんってほんと……同じ時代を生きてると思えないんだけど」
裕幸は耳まで赤くして肩を震わせているが、亮としては笑われるような発言をしたつもりはない。
いまどきの若者らしい裕幸との間に、実年齢以上の年の差を感じて物悲しい気持ちになってくる。
「………どうせ僕はオジサンですよ」
七つも年下の子ども相手に拗ねるわけにもいかず、出来ることといったら精々肩を落として裕幸に背をむけることくらいだ。
「そんなこと言ってない!可愛い。すごく可愛いです」
室内に戻ろうと歩き出せば、裕幸は慌てて靴を脱いで追いかけてきた。首周りにまとわりついてくる長い腕を振り払うのもおとなげない。諦めて肩の力を抜くと、裕幸は嬉しそうに頬を摺り寄せてくる。
「ごめんごめん。怒らないで。心配してくれてありがとう。でも、ただの伊達眼鏡だから大丈夫だよ」
そんなの掛けてたら目に悪いんじゃないかと言いたくなったが、またバカにされることが目に見えていたので、開きかけた口を噤む。
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