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代わりに手に持った大きな紙袋に目をむけると、釣られてそれを見た裕幸は眉をひそめた。
「あ、やっぱりこれ気になる?」
「うん」
首を振ってうなづくと、裕幸は面倒くさそうに頭をかいた。
「今度大学で学祭があるんだけど、そこでするカフェの衣装。帰り際に渡されたから、そのまま持ってきちゃった」
「見てもいい?」
あまりに気乗りしない様子に、逆に興味を引かれた。
裕幸は無言で紙袋を手渡してきたので、許可を得たと判断して中身を取り出してみる。中に入っていたのは白いシャツと黒いベストに長ズボンというよくある制服で、そこまで嫌がるような服ではないように思う。
少なくとも、長身で手足が長い裕幸にはきっとよく似合う。
「何でそんなに嫌そうなの?」
「狙い過ぎてて恥ずかしい。これ、絶対女子の受け狙ってるでしょ。亮さんには分からないかなぁ」
裕幸の言う通り、なぜこの衣装が恥ずかしいのか、いまいちピンと来ない。しかしいずれにせよ、裕幸はいさえすればどんな格好をしていても女の子には喜ばれるだろう。
見目が良く、その上明るくて人当たりのいい彼を好ましく思うのは、女性なら当然のことだと思う。
少しだけ気持ちが沈んだのを、なるべく態度に出さないように気をつけながら窓へ向かう。
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