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長時間開けっ放しにしてあったせいで、さすがに少し室内が冷えてきていた。
「そんなに嫌なら、どうして引き受けたの?」
「これ着ないと次撮る映画の主役にする、って脅されたんだよ」
窓を閉めてから振り返ると、裕幸は広げた衣装を畳み直して再び紙袋にしまったところだった。
大学に入学したらサークル活動をしたほうがいい、と熱心に勧めたのは亮だ。貴重な大学生の時間が、自分にばかりかまけて浪費されていくのはあまりにも忍びなかった。
その結果、裕幸はしぶしぶではあったが、映画研究会に入った。
もともと彼は映画を観るのが好きだったが、作る側にも関心があったらしい。本人は脚本を勉強してみたいといっていた。
しかしまぁ、いかんせんこの外見なので、入部するなり二枚目俳優として配役されそうになり、本人は必死で抵抗している。
小器用な子なので、やらせればそれなりの演技をするだろうな、とも思うが。裕幸はそこまでサークル活動に時間を取られるのは嫌だと主張していた。
亮は裕幸が出てくる映画なら、観てみたいと思うけれど。
「この服着ているところ、見に行こうかな」
ちらりと見た衣装にも、大学での裕幸の生活にも興味があった。
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