SS01 (大学生編)

6/11
前へ
/111ページ
次へ
温かいお茶でも淹れようかと間近に座る青年から離れ、台所に立った。 薬缶で湯を沸かす用意をしながらふと視線を戻すと、裕幸は手持ち無沙汰だったのか、畳み掛けの洗濯物を畳んでくれていた。 あまりに亮の生活に馴染んでいる彼に、面映いような申し訳ないような気分になる。 一人暮らしを始めて半年も経つのに、いまだに家事全般、裕幸の方が上手い。 「そりゃ、ないとは言わないけど。なんか、亮さんがその普通のひとと同じ反応するっていうのが、ちょっと違和感あって」 「…前から薄々思ってたんだけど、裕幸くん、僕のこと誤解してない?僕、ほんとに平凡なつまらないおじさんだよ?」 知り合ったころの裕幸があまりにも幼かったからか、ときどき彼は妙に亮を神格化しているような気がする。それに気づく度に、今ではその幼かった少年とお付き合いをしているという事実に、亮は結構まじめに打ちひしがれている。 戸棚から取り出した茶葉を適当に急須の中に入れて、薬缶から湯を注ぐ。マグカップと急須を持って裕幸の隣に戻ると、当然のように裕幸は腕を伸ばして受け取ってくれた。     
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

503人が本棚に入れています
本棚に追加