503人が本棚に入れています
本棚に追加
やわらかい手つきで急須を揺らしてから、お茶を注いでくれる。亮には食べ物も飲み物にもまるでこだわりがないが、裕幸の手を通すとなぜか全部美味しくなるのは分かる。
温かいお茶を一口飲んでから、改めて裕幸に向き直って訊いてみた。
「君の中の僕ってどんなイメージなの?」
「えぇと…」
肩が触れ合うほどの距離に座る青年は、しばし無言で亮を見つめてきた。穴が開きそうなほど熱心に凝視されることにしばらく耐えていたら、やがて納得したように一つうなづいて口を開いた。
「幻想的?」
「それって人間に対する表現であってる?」
あまりの言葉に開いた口がふさがらない。長い付き合いになるけれど、彼の言葉のセンスがここまで壊滅的なことを初めて知った。
もし本気で脚本家になりたいというなら、止めてあげなければと胸に刻む。
真剣に思い悩んでいたら、裕幸はへらっと緊張感のない笑顔になった。
「いや、まぁ、半分ぐらい冗談だよ。…でも、夢見ている、っていう点では、亮さんのがひどいと思うけど。亮さんいまだにオレが小学生に見えてるときない?」
とっさに否定することが出来ず、ぐっと言葉につまる。
さすがにそこまでこどもだとは思っていないが、ふとしたときに幼かった少年の面影を探してしまうことはたまにある。
「そんなことは、えぇと、」
最初のコメントを投稿しよう!