SS01 (大学生編)

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どう言い訳をしても、裕幸にとっては面白くないだろうことは分かっている。この手の話題はどちらにとっても良い結果で終わった験しがないので、最初から訊かないで欲しい。 何と答えればいちばん角が立たないか、必死に頭を働かせる亮の横で、いつもだったらとっくに不機嫌になっているはずの年下の恋人は、いやに清々しい笑みを向けてきた。 不穏な空気を察知して、気持ち少し後ずさる。 「中三のころの鉄板のズリネタは亮さんのスーツ姿でした」 爽やかに笑う裕幸の口から出たとはとても思えない卑猥な話題に、瞬時に亮の脳は考えることを放棄した。 「…………は?え?」 「会議か何かに出た帰りの亮さんにたまたま出くわしてさ。腰のラインがくそエロくって、多分妄想の中でオレ亮さんのスーツ百回は脱がせたと思う」 「僕が今まで着たことのある回数以上だよ、それ」 呆然としたまま、思わず斜め上の合いの手を入れてしまったが、すぐに我に返った。 裕幸が長い間亮に片想いをしていたことは知っているが、こんなことを聞かされるのはいくらなんでもマナー違反だと思う。 「な、んで急にそんなのこと言うの?」 眼差しを険しくして、ぐっと睨みつけても、裕幸は知らん顔だ。 「さすがにあの頃の可愛い裕幸くんが何をオカズにしてたか聞かされれば、目が覚めるかと思って」 「そんなの聞きたくない」     
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