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色々気になったが、訊くのが怖い。怖いがここで目を逸らしてはいけないのは分かっている。勇気を出して気遣わしげな視線を向けてくる裕幸と目を合わせると、何を勘違いしたのか裕幸は照れくさそうに笑った。
目元を緩めて微笑む青年を見かけたのがテレビの画面上だったらよかったのに。きっと感じのいい子だな、ぐらいは思ったと思う。しかし残念ながらここはベッドの上だ。その上、腰から下が現実だと思いたくないぐらいにだるい。
「身体が痛い」
「え、マジですか。すみません」
「いい。許したのは僕だから。……今何時?」
「えっと、正午前です。お水でも飲みます?」
「もらう」
ばたばたと走り回って世話を焼こうとする裕幸は、こちらが恥ずかしくなるくらい機嫌がいい。冷蔵庫からペットボトルを見つけ、急ぎ足で戻ってくると、わざわざキャップを開けて手渡してくれた。
「ありがとう。……それで、楽しかった?」
「え?」
「いや、その、ちゃんと裕幸くんの希望にそえたのかなぁと思って」
羞恥に耐え切れず目を伏せ、ペットボトルから水を一口飲む。
縛って欲しいと頼んだのはこちらの方だが、何と言うか色々と想定外だった。何より予想と違ったのは、あまりに裕幸が生き生きとしていたことで、今までたくさんがまんさせていたのだなぁ、と思い知った。そのことをとても申し訳なく思ったので、例え縛られていなくてもろくに抵抗出来なかったと思う。
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