SS08 裕幸大学生冬

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SS08 裕幸大学生冬

 職場からの帰り道。裕幸に頼まれた買い物をするためにスーパーに寄ったら、同僚の松本に会った。 「こんばんは」  幼い息子を連れた彼女は、今日はオフだったはずだ。長いコートを着込んで、カートに食材を山と積んでいる。 「長谷川くん!?」  振り返った顔は、驚愕を露にしていた。何をそんなに驚くことがあったのだろう。過敏な反応に亮の方こそ驚いて、思わず周囲を確認してしまった。だけど、特に異変は見つけられない。  もう一度松本に視線を戻す。見開いた瞳の焦点に据えられているのが自分だということを改めて確認し、亮は首をかしげた。 「そんなお化け屋敷でお化けを見たみたいに驚かなくても」 「何言ってるの、お化け屋敷にお化けがいるのは当たり前じゃない。もっとびっくりしたわ」  間髪いれずに返してきた同僚の返答に、亮は眉を顰めた。  例えが悪かったのは認めるが、納得がいかない。確か以前、松本には職場の近くで一人暮らしを始めた、という話はしてあったはずだ。 「一人暮らしをしている同僚と職場最寄のスーパーで会う方が、お化けを見るより驚くって言うんですか?」     
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