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「えぇとですね。多分亮さんの雰囲気とか、外見に理由があるんだと思います」
思わず鏡に映った自分の洋服を確認した。無地のシャツに紺色のスラックス。確かにお洒落には全く興味はないが、清潔にはしているし、これ以上なく平凡な服装だと思う。
「僕、普通の格好しているよ?」
「亮さんみたいにずば抜けて容姿の整ったひとが、垢抜けない地味な格好をしているってことがそもそもおかしいんですよ。普通もっと外見に気ぃ使いますもん」
「僕、今悪口言われてる?」
あまりの言われようにショックを受けていると、両手にお皿を持った裕幸が再び洗面所に顔を覗かせた。
「違います。そんなところも亮さんらしくて大好きです」
「そ、そう……ありがとう」
真顔で頷いてから、裕幸はまた軽いスリッパの音を立てて去っていく。その後をふらふらと追いかけると、恋人はもくもくとテーブルに料理を並べていた。
裕幸だって疲れているだろうに、調理台とローテーブルを休むことなく行き来している。少しは手伝わなくては、と思うものの、色々と衝撃が大きすぎて動けない。
「まぁ、もっと小洒落た格好すれば、得体が知れない感じはなくなるでしょうね」
「得体が知れない……」
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