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SS01 (大学生編)
今日は久しぶりの休日だった。
溜まってしまった洗濯物を片付けたくて、朝から二度洗濯機を回した。
空は雲ひとつない小春日和で、洗濯ばさみに留められた生成りのシーツがはたはたと泳いでいる。少し肌寒いけれど、換気がてら細く開けた窓から入る秋風が気持ちいい。
乾いた洗濯物を取り込んで畳んでいると、呼び鈴がなった。
玄関に出れば、そこには長袖のカーディガンを羽織った裕幸が立っていた。手には大きな紙袋を提げている。
「こんにちは、亮さん」
今日が休みであることは伝えてあったので、大学の後裕幸が来るのは分かっていた。
玄関で佇む裕幸はにこにこと人懐っこく笑っている。くるぶしまでのブーツも明るい色のTシャツも、亮だったら絶対着ないけど、彼にはよく似合っている。
しかしその機嫌のよさそうな笑顔の中に思いがけないものを見つけて、亮は目をぱちくりと瞬かせた。
「裕幸くん、視力悪くなっちゃったの?」
「え?」
「眼鏡かけてるから」
すっと通った鼻梁に乗った黒縁眼鏡を指摘すると、裕幸は一瞬真顔になったあと、横を向いて噴出した。
「…っ、~~っ!」
「……僕なんかおかしいこと言った?」
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