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いつものようにドアを開けた週末。
「おかえり」
パタパタと軽い足音を立てて走って出迎えてくれた司に、ただいま、と自分でも分かるほどの満面の笑みを返した。
ぽいぽいと靴を脱ぎ捨てたら、今日の晩御飯のメニューを嬉しそうに報告してくれる司を抱き寄せて、ひとまずただいまのキスとしゃれこむ。
「んっ……、もうっ」
途端にボンッと真っ赤になってワタワタするのが可愛くて、華奢な体を気が済むまで強く抱き締めたら、ようやく体を離してリビングへ向かう。
奥へ行くほどに美味しい匂いが強くなって、ぐぅ、と情けなく腹が鳴くのを聞き付けた司が嬉しそうに笑って、準備するねとキッチンに立つ姿を感慨深く見つめた。
二人で花火を見つめた後から、司はぐんと明るくなった。照れて笑う顔には今までにない華やかさが加わったし、嬉しそうにはにかむ顔にも柔らかさが出た。ますます魅力的になって、正直競争率が上がりそうでヤキモキしているのだけれど。
左手の指輪と、二人きりの結婚式と。それから、何かあるたび照れ臭そうに──だけど幸せそうに、颯真だから好きなんだよと、紡いでくれる真っ直ぐさに救われている。
ちっぽけな嫉妬にかられて戸惑って以来、司は不器用ながらに一生懸命、言葉と態度に出してオレを愛していると告げてくれるようになった。
不満など全くない。──と言いたいのに言えないのが人間の欲深さだろうか。
不器用な愛情表現を受けるたびに沸き上がる、いつでもいつまででも一緒にいたいと言う気持ちは、鰻登りの急上昇だ。休みが明けて帰っていく後ろ姿を見送るたび、帰るなと──一緒に暮らさないかと抱き止めたくなる。
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