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「──どしたの、難しい顔して」
「ふぁっ!?」
まだ金曜日の夜だと言うのにそんなことを思い浮かべて複雑な気持ちに浸っていれば、キョトンとした司に覗き込まれて大袈裟に仰け反ってしまう。
「……どしたの」
ビックリして自分も目を真ん丸にして仰け反った司が重ねて問うのに、なんでもない、と笑い返したら、待ちきれない顔を取り繕って司の背後に目をやる。
「まだかなぁって」
「……──そんなお腹空いてたの?」
何かを誤魔化そうとしていることに気付いているらしい司が、だけど何も聞かずにオレに合わせて笑ってくれるのが、優しいようなじれったいような複雑な気分だ。
「ご飯にしよっか」
笑った司に促されて、司を手伝って料理を机に並べる。
今日は炒め物とお味噌汁に小さなポテトサラダがついていた。
「作りおきしといたから、またいつでも食べてね」
「ありがと」
にこりとはにかむ柔らかい顔は、照れて紅く染まっている。こういうところがいつまで経ってもうぶで、本当に可愛いから困る。
じゃあ食べよっか、とぎくしゃくと手を合わせた司をそれ以上からかうことはせずに、同じように手を合わせる。
「いただきます」
声が揃うのはもう、いつものことだった。
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