Ⅰ,Tow Love‐ふたつの恋‐

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みるみるうちに女の子の水色のハンカチがコーヒーの色で染まっていく。同時に雅臣の制服の袖は本来の白い色に戻っていった。 突然の出来事にきょとんとした顔で女の子を見つめる二人の前で、手際よく雅臣の袖のコーヒー染みをすっかり綺麗に戻すと、女の子はようやく袖から手を離し改めるように雅臣に話しかけた。 「これでとりあえずは大丈夫だと思う。でも、一応あとで石鹸かなんかで袖を洗っておいた方が良いよ。」 そう言うと、その女の子は雅臣にむかって「ニコッ」と微笑んだ。 「え‥あ‥うん。ありがと‥」 「未空~!?そろそろ移動時間だって。行くよ~!?」 「あ、はーい。‥じゃあね。」 あまりのあっという間の出来事の中、雅臣はようやく我に返って慌ててお礼を言おうとするまえに、その女の子は慌てて挨拶をするとその場から離れて友達が待っている方へ駆け出して行った。 「‥あの子。隣のクラスの橘未空でしょ。」 「友也。お前、あの子のこと知ってるのか?」 「お前知らなかったのか?結構可愛いって有名だぜ。」 「そうなんだ‥。」 「お前ってさ、ほんとそうゆうの疎いよな。」 雅臣の横で呆れたように話しかけてくる友也の言葉を横で軽く聞き流しながら、雅臣は未空が去って行った方を見つめていた。
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