5人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
《ガー…!?》
ふいに、店の入口の自動ドアの開く音が店内に響き渡りお客が入ってきた。
雅臣は落ち込んで俯いていた顔を慌てて上にあげると元気よく出迎えの声をかける。
どんなに気分が暗くなっていてもお客様にはいつでも笑顔で挨拶するというのは子供の頃から両親に言い聞かせられていたのだ。
元気で明るい雅臣の今の性格を形作った土台にもなっていた。
「…いらっしゃいませー!?」
「おつかれ。雅臣。相変わらず気持ちのいい挨拶するよな。なんか一気に疲れが飛ぶような気がするよ。今、大丈夫か?」
本当に疲れが飛んだかのような嬉しそうな笑顔で、翔太は雅臣に言葉を返す。そんな翔太に答えるように、雅臣もさらに明るく返事をした。
「ハハ。いらっしゃい。今ちょうどすいてる時間だから大丈夫だよ。ゆっくりしていってね。」
「だろうなって思ったから来たんだ。」
お店 に入ってきたよく知る友達の姿に、雅臣は自然と気持ちが緩む。同じように翔太もすっかり心を緩めて少し冗談ぽく笑いながらさらに言葉を返した。
「友也も悪いな、ちょっと邪魔するよ。」
「どうぞお構いなく。俺の店じゃないし、こっちはこっちで好きなようにやってるから。」
「ハハ。翔太くん気にしないでね。友也はこんな言い方してるけど、別に怒ってるわけじゃないから。」
「ハハハ。わかってるよ。」
冗談を返しながら、翔太は雅臣の前に座っている友也の姿にも一応断りの言葉をかけた。
一年二年と連続で副学級委員を務めるくらい、人に信頼を得やすく場をまとめるのが上手なしっかり者である翔太らしい気づかいなのだ。
友也への気づかいと雅臣との一通りのやり取りを終えると、翔太は改めるように開け放たれた入口の外にいる誰かに話しかけた。
「大丈夫だって。入って来ていいよ。」
翔太のその言葉を待っていたように、彼の後ろから同じ制服を着た男女三人が顔を出した。
「…えっ!?」
翔太の促しの言葉で店に入って来た三人の中にいた未空の姿に、雅臣は思わず声を上げてしまい慌てて口を押える。
「へえ…。橘未空。ついに来ちゃったね。」
そんな明らかに顔を赤くして固まってしまった雅臣の姿に、彼の前のカウンター席に座っている友也は、雅臣とは反対にどこか面白そうに小さく声を漏らした。
最初のコメントを投稿しよう!