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身に覚えのないクレームをつけられても困る。
「お前、あの日の事なかったことにしようとしてるだろ」
ギクリと身体が強ばるのを感じた。
夢だ幻だと誤魔化していたのを、橘は気づいていたんだ。
「橘があまりにも普通だったし、酔ってたからなぁって思ってたのに」
「俺があの程度で酔うわけないだろ。縁じゃあるまいし」
「いちいち縁を引き合いに出さないでよ」
縁はお酒に弱くて、すぐ飲まれてしまう。
あの夜の出来事だって、そんな縁のお酒の弱さにつけ込んだようなものなのだ。
まるでその事を責められているようで、私は苦い気持ちを抱えた。
「ちゃんと考えたのか?」
「まさか。片想いに飽きたって言われても、そんなこと知らないわよ」
「飽きたんだよ、お前の片想いを見続けるのに」
「.....はぁっ?!」
勘違いさせる言い方しないでよ!
てっきり橘が私にずっと片想いしてたのかと、思い上がってしまったじゃないか!
良かった...口に出したりしなくて。
今世紀最大の恥をかくところだった。
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