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「これ着て」
コートをかけられ、大人しく着込む。
思いの外飲んでしまっていたのか、足が思うように動かない。
「どれだけ飲んだの。まぁいい、後で聞く」
縁の少し怒ったような声に、回らない頭が警告を鳴らす。
着いていっちゃダメだ...ダメなのに...。
何故ここに縁がいるのかとか、何でこんなに怒っているのかとか。
いらない疑問がグルグルと巡って、私の思考を邪魔してくる。
「言い訳も反論も許さない」
こんな強引な縁は初めてで、私は少し怖くなった。
近くの駐車場に止めてあった縁の車に押し込まれ、私は大人しく従うしかなくなった。
「縁...怒ってるの?」
「怒ってるよ」
「怒らないで?」
「...それはこれからの湊次第だよ」
不機嫌さを隠そうともせず、いつもより荒い運転で縁は車を走らせた。
でもそれも少しの時間で、ほとんどは安全運転をしてくれたのが縁らしいと言えばらしかった。
連れてこられたのはあの朝、私が惨めに去ったあのマンションで。
勝手に震え出す体を、どうする事も出来なかった。
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