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「湊...」
「え?はい」
意味不明な橘の言動に気を取られていた私を、縁の切なげな声が呼び戻した。
「オレ、湊が好きだ。今更信じてもらえないかもしれないけど、どうしようもないくらい湊じゃなきゃダメだ」
「...」
「湊は?オレじゃ...ダメか?」
何なんですか、その乙女みたいな上目遣いは。
何年片想いしてたと思ってんの?
そんな事されたって...ちっともトキメいたりしないんだか...らね。
なんとか理性を保とうとする頭なんて完全無視して、ドキドキと再び騒ぎ出す心臓は馬鹿な私の象徴。
「ダメ...って言いたい」
「じゃあ言わせない」
握られていた手が不意に引き寄せられ、私はスッポリと縁の広い胸に収まってしまう。
ちょうど縁の心臓辺りに当たった耳には、私と同じくらいの早さで鼓動を刻む音がしっかりと聞こえた。
「展開が急すぎて頭も気持ちもついてこない」
「ゆっくりでいいから、オレを好きになって」
その言葉に思わずガバッと顔を上げる。
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