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「ゆっくり...?」
「うん。ゆっくりでいいから」
「何を言ってるの、あなたは」
本当に丸っきり私の想いに気づいていなかったのか、この男は!!
ゆっくりだなんて冗談じゃない。
私の重すぎるくらいの想いを、そんな言葉で片付けられるなんて耐えられない。
「バカじゃないの!好きでもない男になんで抱かれたりしなきゃいけないのよ!もう15年も片想いしてる女に、よくもそんな無神経な事が言えたわね!」
完全なる八つ当たりとはこういう事を言うのだろう。
気づかれないようにしてきたのは私だというのに、ありえない言い掛かりを付けてしまった。
ハッと気づくと、縁は言葉を失って固まっていた。
やってしまった。
こんな風に感情をぶつけた事なんて、一度もなかったのに。
「ご、ごめん。つい...」
「ヤバイ...」
「そ、そんなにショックだった?ごめんね、訳わかんない八つ当たりして」
オロオロと居場所なく辺りを見回してみても、大失態を犯した私の救いになるものなんて何ひとつ落ちていやしない。
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