嘘か誠か

18/18
前へ
/183ページ
次へ
「えに...」 名前を呼び終わる前に、再び縁の胸に捕えられる。 さっきよりずっと強い力で、ビクともしない。 「あはは!湊、カッコいいな!オレ今なら嬉しくて心臓止められるかも」 「ムグムグ」 それはやめて、と言いたいのに言葉にならない。 そして苦しい。息ができない。 バシバシとプロレスのタップのように、縁の胸を叩く。 「あ、ごめん」 ようやく息も絶え絶えの私に気づいて力を緩めてくれる。 「ダメだなんて言わないよね?」 「言えるわけないじゃない。騙されてるんだとしても、嫌だなんて言えるわけないじゃない!」 こみ上げる涙は止まってくれない。 もう私の顔はぐしゃぐしゃで見られたものじゃないだろう。 橘に言わせれば、きっと妖怪になってる。 「好きだよ、湊。もうオレの事以外で泣いたりしないでね」 「...オレの事でも泣かせないよって言いなさいよ」 どこまでもマイペースな男。 それでもこの手を離せない...ちっとも成長しない私がいた。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加