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 数日間の約束で、既に一週間泊まる部屋では、長椅子に寝転ぶ悪魔を鬱陶しげに見つめる黒い男がいた。 「オイ。おまえはいつまで、俺の安眠を妨害する気だ。この一文無しの居候悪魔が」  中途半端に長い黒髪を首の後ろで括り、上下とも真っ黒な室内着で、煙草をくわえた黒い目の男。端整な顔に浮かぶ不機嫌さを隠しもせずに、斜め向かいの椅子に、足を組んで座っている。  普通は入れないこの居室に悪魔を迎え入れている時点で、男が本気で拒んでいないのは明らかなのだが……。 「その顔で無防備に眠るな。寝起きに見ると心臓に悪い」  夜型の悪魔が、明け方にやっと寝付いてから、まだ数時間しかたっていない。  安眠を妨害したのは男の方で、その内容たるや、いちゃもんの領域を軽く超えていた。 「少しは自覚しろ。さもなくばガキに戻れ。これだから吸血鬼は、美形揃いでタチが悪い」 「んえ……はい……?」  さすがの悪魔も、体を起こして瞼の上がらない目をこすりながら、不当な糾弾に答えるしかない。 「何それ……ひょっとしてオレ、襲われるって言ってる?」  この男と知り合った頃、吸血鬼である悪魔は子供の姿だった。といっても、中学生から高校生になった程度の変化でもある。  ただこの男には、少し前から伴侶ができている。様々な事情で、その伴侶は悪魔と同じ顔をしている。  互いに頻繁には会えないらしい。そして悪魔の容姿が男の好みなのは、言わずとも知れていた。
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