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「移ったものは仕方がない。おまえはおまえとして、おまえの相方と改めて出会うしかない」  昨夜に決まった、これからの二人暮らし。その相手は男の言うように、悪魔の相方と呼んで遜色ない存在であり……その関係を作ったのは「翼槞」なのに、これから相手をしていくのは今の悪魔らしい。 「うわ、やば。そんな言い方されると、ちょっとキンチョーしてくるじゃん」  悪魔の本職に関わる相方関係ではあるものの、もう既に、五年以上は離れて暮らしている相手。  以前に共に過ごしたのは「悪魔の翼槞」だ。その時には何ら問題はなかった。  「翼槞」は必要最低限の事しかせず、互いにほとんど干渉しない。しかし今の悪魔は、それが気になってしまう時点で異質だった。 「オレのこと、ツバメ……絶対変に思うだろーな……」  数日後に、僅かでも身支度を整えてからこちらに来ると、相方は言っていた。それまでに、今まで通りの「悪魔」に戻れるものだろうか。  元々悪魔と相方の関係は、薄氷のように基盤が頼りない主従の契約だ。主にあたる悪魔がしっかりしなければ、従者の信頼を無くしかねない。  それは半分どうでもいいが、拙い繋がりが切れると双方が困る事情があるのだ。 「大体、そもそも……オレは誰?」  記憶としては、今までの己のことはわかっている。  しかし現在の自身の嗜好や特性を、これから把握しなければいけないだろう。
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