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 悪魔はそもそも、人造の吸血鬼だ。職業が悪魔、種族は吸血鬼とも言える。  相方は悪魔の血を分けられ、半ば吸血鬼化した精霊もどきという、ひどくわかりにくい存在だ。吸血鬼である悪魔が純血種なら、相方はあまりに雑種過ぎる。  そんな悪魔も相方も、この人間界の化生ではない。人間界という場所は基本的に、人間以外の存在を許容していない。  人間界が初めての相方には、まずその辺りを説明しておかなければいけない。 「注意しなよ? ここでは妖怪も悪魔も精霊もいるけど、表立つのは、どいつもタブー。人間側すら、『力』を伝える家系は、極秘で異端視されてるからねー」 「……」 「『力』も五分の一になるし、厄介なんだよね。時間も同じで、帰る時は下手したら、向こうでは数年たってるよ」 「…………」  悪魔達の故郷と人間界を繋ぐ、多重世界に存在する診療所。その中継地点を出てから、相方はずっと真っ青な顔で隣を歩いている。  今は何を言っても、おそらく上の空だ。住宅街を歩くだけでこの調子なら、市街に出たらどれだけ衝撃を受けるだろうか。  ひしっと肩掛けの荷物を掴みながら、相方がやっと声を絞り出した。 「なんでこんな……沢山家が、ぎゅうぎゅうしてるんだ……」  文明未開の異界から出て、最初の疑問がそれかい。と思いつつ、住宅の密度より気配、人口の多さを言いたいのだと察する。  元々多感な相方は、あまり人の多い所は苦手なのだ。
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