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諸注意はとりあえず後に回して、相方の質問から答えることにした。
「日本は土地が狭いのさ。この辺りはまだ、ハイソでゆったりした方なんだけど」
「ゆったりって……こんなに道が硬いのに?」
そういうことじゃない。と笑いたい気持ちをこらえて、説明を続ける。
「これはアスファルト。大体どこでもこうなってるから、壊しちゃ駄目だよ」
「でもこのひどい匂い……こんな道のせいじゃないのか? これでもここは、まだましな場所だっていうのか?」
「空気はどこでも汚れてるよ。オマエにはきつい環境だろうけど、ま、すぐに慣れるよ」
自然という系統の「力」である、精霊のようなもの。そんな相方には、まず自然環境の歪みだけでかなりのストレスのはずだ。
それで言えばこの世界はあまりに、人間も人間以外のものも、手が加えられ過ぎている。
長く人間界にいると、その便利さが当たり前になってくるが、本来世界は便利になどできていない。ただ生きるだけで闘いなのは何処も同じで、野生の動物を見ればよくわかるだろう。
それをここまで、「力」なき人間が謳歌できる環境にした人間界は、大したものだと悪魔は思う。たとえそれが、遠からぬ破綻という代償を伴っていても。
そうは言っても、相方はわけのわからない便利さよりも、安らぎを渇望するだろう。
住む場所はせめて、自然が多めの郊外にしておこうと、悪魔は何となく心を決める。
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