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多大なカルチャーショック中の相方は、悪魔の変化への違和感など忘れ去っていた。人間界に慣れるまでは、その余分を考える暇もないだろう。
駅前に出て、往来する車やスマホを持つ人通り、立ち並ぶビルや路上の巨大テレビは、相方には刺激が強過ぎたらしい。
「魔窟……だ……」
悪魔達の故郷では、インターネットもマスメディアもない。一部の地域の照明で、ガスや電気がやっと使われ始めたばかりだ。交通手段は自転車や馬車、船舶があれば都会である方なのだ。
踏切を渡り、線路は電車が通ると教えても、全く理解した様子はない。
「あんなに長い所、でかい蛇でも通るのか?」
「のーのー。トロッコみたいなもんで、金属の箱が沢山繋がって動くの。車だって馬車を金属で作って、馬だけ外したようなもんだろ」
「馬がいないのにどうやって動くんだ。人間にそんな怪力があるのか?」
「あのね。別にあの四角い中で、人間が必死にペダルこいでるわけじゃないからね」
どこに行っても、何を見ても、始終この調子だ。
少し前に、相方の妹が先に人間界に来たので同じように案内したが、妹の方は人間界の勉強をしていた。それでもショックを受けていたので、相方はおそらく、今にも倒れそうな心境だろう。
そもそも、人間界に不慣れな妹と、同じ高校に通ってほしいというのが相方の頼みだ。
その生活費を稼いでもらう約束で呼んだが、なかなか前途は思いやられた。
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