_3:

6/10

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
 多大なカルチャーショック中の相方は、悪魔の変化への違和感など忘れ去っていた。人間界に慣れるまでは、その余分を考える暇もないだろう。  駅前に出て、往来する車やスマホを持つ人通り、立ち並ぶビルや路上の巨大テレビは、相方には刺激が強過ぎたらしい。 「魔窟……だ……」  悪魔達の故郷では、インターネットもマスメディアもない。一部の地域の照明で、ガスや電気がやっと使われ始めたばかりだ。交通手段は自転車や馬車、船舶があれば都会である方なのだ。  踏切を渡り、線路は電車が通ると教えても、全く理解した様子はない。 「あんなに長い所、でかい蛇でも通るのか?」 「のーのー。トロッコみたいなもんで、金属の箱が沢山繋がって動くの。車だって馬車を金属で作って、馬だけ外したようなもんだろ」 「馬がいないのにどうやって動くんだ。人間にそんな怪力があるのか?」 「あのね。別にあの四角い中で、人間が必死にペダルこいでるわけじゃないからね」  どこに行っても、何を見ても、始終この調子だ。  少し前に、相方の妹が先に人間界に来たので同じように案内したが、妹の方は人間界の勉強をしていた。それでもショックを受けていたので、相方はおそらく、今にも倒れそうな心境だろう。  そもそも、人間界に不慣れな妹と、同じ高校に通ってほしいというのが相方の頼みだ。  その生活費を稼いでもらう約束で呼んだが、なかなか前途は思いやられた。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加