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 悪魔の唯一の希望、トイレと浴室が分かれた物件を見つけるには、意外に時間がかかってしまった。  交通の便が悪く、山沿いの郊外であるため安いワンルームに目星をつけた頃には、既に日が暮れかかっていた。 「――あ。そう、いえば……」  朝から動き回っているせいで、すっかり眠気を覚える夕暮れだったが。先日の同じ頃合いから放置していた問題を、悪魔はようやく思い出した。 「あの教会、どうっすっかなー。高校の近くにあるしな、やな感じだよなー」  借りる部屋からは離れているので、相方はそうそう出くわさないだろう。相方は人間にはおおむね無害で、そうあってもらう方が良い。  この人間界では、悪魔も相方も「力」が弱められる。まともに部屋を借りたことにしても、今回は慎重にいこうと決めているのだ。  ここではおそらく、自然界の恵みを、精霊もどきの相方はろくに受けられない。そうなると相方の主食は、常に分けている「力」――悪魔の血しかない。  それを思うと、悪魔も今までのように、気ままな体調管理では心もとない。 「オレの方は、ご飯を食べないわけにはいかないよなー。下手したらいつか、目を付けられそう?」  悪魔は元々、不摂生な吸血鬼で、いつも貧血状態だ。そのため体にも、人間の食事から活力を得られる消化力がない。  つまり食事は、人間の血をもらうしかない。それではいつ、天使やエクソシストやらに討伐されるか、わかったものではない。
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