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衣食住の問題とは、大変で、面白い。悪魔はふっと、意味もなく笑っていた。
衣――高校の制服は、診療所がある大屋敷の息子の、お下がりを譲ってもらった。
後の食と住は、悪魔も相方も、場所によって食の形式を変えなければいけない。
「ま、いっか。とにかく、行ってから考えよっと」
吸血鬼である悪魔を、真っ先に討伐せんとする可能性のある、聖なる教会――そこにいた、あの尋常でない「力」を感じる人間の女性。
自らを脅かす存在に、「翼槞」は迷わず殺意を覚えた。しかし今の悪魔は、好奇心の塊と言っても良かった。
「ツバメのいぬまに何とやら……ってね?」
これはおそらく、右も左もわからない相方を巻き込まずに、早めに片付けるべき案件だろう。
なるべく「力」を節約するために、徒歩で向かった教会につく頃には、すっかり夜になっていたのだった。
人気が少なく、物寂しい道すがら、悪魔の脳裏をよぎったのは黒い男の言葉だった。
――今のおまえは、本来に最も近く、そして真逆だ。
近いようで、逆しまなもの。真っ先に思い付くのは、種族としての悪魔と天使だ。
有力な悪魔のほとんどは、堕天使から成ったものだ。それなら今、この翼の悪魔はどうなるのだろう?
「悪魔の逆なら……まさか、天使?」
んなアホな、と真っ先に自分自身でつっこむ。
しかし意外に、それは洒落にならない感慨だったのを、この後に知ることになる。
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