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「何も、いらない……かぁ……」
どうしてか、少しの間、キカリさんの目が眩しいものを見るように細められていて……。
それじゃ、奥さんに誤解のない範囲で、と。
キカリさんはそれを向こうから考えてくれ、からっとした外見よりはずっと相手を気遣うタイプらしい。
「じゃあねぇ、ワタシを家まで送ってくれるかなぁ? 交通費くらいしか、出してはあげれないけどー」
「いいのか? それ」
交通費とは確か、少額なものとはわかっていたが、明朝の猫缶一つが買えれば、今夜の目的は果たされる。
仕事内容も単純で、願ってもない話だった。
思わず、明るい顔をしたツバメに、キカリさんも嬉しそうにうんと笑った。
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