_1:

10/10

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
「何も、いらない……かぁ……」  どうしてか、少しの間、キカリさんの目が眩しいものを見るように細められていて……。  それじゃ、奥さんに誤解のない範囲で、と。  キカリさんはそれを向こうから考えてくれ、からっとした外見よりはずっと相手を気遣うタイプらしい。 「じゃあねぇ、ワタシを家まで送ってくれるかなぁ? 交通費くらいしか、出してはあげれないけどー」 「いいのか? それ」  交通費とは確か、少額なものとはわかっていたが、明朝の猫缶一つが買えれば、今夜の目的は果たされる。  仕事内容も単純で、願ってもない話だった。  思わず、明るい顔をしたツバメに、キカリさんも嬉しそうにうんと笑った。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加