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現在地がよくわからなかったので、主従の契約を結ぶ、相方の気配を探る。
翼の悪魔が助けた相方は普段、半ば死んでいる状態なので、契約している悪魔でなければとても気配は探れない。
帰る方向の目印にしようと思ったのに、何故か相方の気配は、おそらく診療所とは全く違う何処かをさまよっていた。
「……何やってんだ、アイツ」
言いながら、悪魔を探して屋敷を出たのだろうと、大方見当をつける。
休んでいろと言ったのに、そもそも悪魔を見つける当てもないのに、何処を探しているのだろうか。
「相っ変わらず、心配性だよなー」
確かに今日は遅くなったが、そもそもこの翼の悪魔は、夜が本領である吸血鬼だ。慣れない人間界を一人で動く相方の方が、ずっと死にそうな気配だった。
このまま放っておけば、何処かで不審尋問でもされかねないだろう。それでなくても日本人離れした金髪の相方は、戸籍も身分証明書もないので、警察に見つかると非常にまずい。
道は気にせず、とにかく相方の気配を辿っていくと、この町を縦断する川原まで出た。
水辺が好きな相方らしい。橋の影になる堤防の上に潜み、抱える膝の間に頭を埋めて、疲れ切ってへたりこんでいた。
「何遊んでんのさ、ツバメ」
橋から降り立った悪魔に、げっそりと顔を上げた相方は、徹夜明けのような目つきで呟いたのだった。
「……お腹すいた、汐音」
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