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 それなら、と、相方が不思議そうに顔をしかめた。 「そんなに沢山、ご飯になる奴がいるなら、何で汐音は貧血なんだ?」  ここ数日の悪魔は、「翼槞」から汐音に変わった余波なのか、不思議と妙に体調が良かった。  しかしそろそろ、疲れが来ていた。元々持久力は皆無で、こんなに動き回ったのも久しぶりなのだ。 「悪魔そのものは、実際そんなに栄養がないからね。(しん)(けつ)に宿るって言って、心が汚染されれば、血液も汚れちゃうもんなのさ」  相方も半分は吸血鬼のくせに、全くわからないという顔をしている。相方が血を欲しくなる相手は、翼の悪魔か、現在養子になっている家の娘だけのようだ。その基準はおそらく、好意の有無なのだろう。  好きな相手ほど襲いたくなるのもどうかと思うが、それだけ選り好みが激しいわけだ。それなら悪魔の食の好みも、わかってほしいものだった。 「オレはなるべく、美味しい血が欲しいんだよ~。自分に取り込むもんなんだから、それはオマエもわかるだろ?」 「不味いのが嫌なのはわかるけど……悪魔の血は、不味いのか?」 「そういうコト。オレにとって、悪魔かそうでないかは、そこなんだからさ」  だから翼の悪魔は、悪魔に堕ちかけた人間の血を主食としている。悪魔と言える相手というギリギリのラインだ。  人間界は辺境のわりに、「力」がない場所の分、人外生物が目立ってしまう。人間を襲っても討伐されないためには、工夫が必要なのだ。
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