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「悪魔は多いけど、なりかけの悪魔は逆に貴重でさー。オマエみたくご飯が確定してない分、自分で狩りに出かけなきゃなのさ」
「…………」
暗い橋の下、相方は黒い横目でじっと悪魔を見つめてくる。悪魔が今、どの程度貧血なのかを見定めているのだろう。
翼の悪魔の血が主食と言っても、負担が大きい時には相方は無理を言わない。五年以上離れていても平気なのだから、力の源は他にもあるのだ。
「……汐音、今、結構やばいな」
それでも悪魔の血は、相方にはご馳走らしい。久々に味わうのはまだ無理なのだと、あからさまに残念そうな顔をしていた。
相方のそうした、留守番中の犬のような目を見ていたせいだろうか。いつの間にか悪魔の、人家での動揺が大きく和らいでいた。
「オマエも大概だよねぇ。オレ以外にも美味しそうな奴、たまには探してみれば?」
「……」
不服そうな相方に、ますます心が和む。
何がそんなに気に入ったかは知らないが、この翼の悪魔の存在は、相方の狭い好みの内であるらしい。それはそんなに、簡単には揺らがないようだった。
相方と出会った「翼槞」は当初、ギブ&テイクしか求めていなかった。必要なのは互いの「力」の共有――主従の契約そのもので、だから相方が離れていても平気だったのだ。
けれど今の悪魔――汐音は、相方がここにいることを嬉しく感じている。
それはおそらく、人間界のこの町だからこそ生まれた、新たな感情だった。
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