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目が覚めてもまだ胸が痛かったので、昼休み中の医者を捕まえて、体を診てもらうことにした。
今外来で処置をしているはずの、医者の助手も往診に出かける前なので、暇らしい医者はあっさりと承諾してくれた。
「とりあえずは服を脱げ。翼を全部出せ。話はそれからだ」
「ちょっと待ってよ。別に脱ぐけど、ていうか脱がなくても羽は出せるのに、何で脱がなきゃいけないのさ?」
診察で服を脱ぐのはわかる。しかし、悪魔の身の内に秘める「力」を出せなどと、唐突に言う医者に眉をひそめる。
医者はいつもの無表情のまま、煙草を取り出して静かに火をつけた。
「おまえのその反応が見たかっただけだ。俺の趣味だとでも言わせたいのか、おまえは」
「ちょっと待ってよ。それ、服と羽と、どっちのこと言ってる?」
ひとまず、からかわれているのはよくわかった。「翼槞」なら動じないようなことで、悪魔が引っかかるのが面白いのだろう。
結局服は脱がずに、ファスナーの開いた部分から、簡単に聴診器を当てられただけだった。
「それじゃ、翼を出せ。十中八九、そいつらが不協和音を起こしてる」
「初めからそう言ってよ……にしたって、何でまた今更……」
医者は翼、悪魔は羽と言うように、現在悪魔の内には大きく二種類の「力」を封じている。
そんな様々な「力」を身に持てるのも、「力」に応じた四つの意識があった、「都合良く造られた」悪魔の特殊性だ。
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