_6:

5/10

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
 目が覚めてもまだ胸が痛かったので、昼休み中の医者を捕まえて、体を診てもらうことにした。  今外来で処置をしているはずの、医者の助手も往診に出かける前なので、暇らしい医者はあっさりと承諾してくれた。 「とりあえずは服を脱げ。翼を全部出せ。話はそれからだ」 「ちょっと待ってよ。別に脱ぐけど、ていうか脱がなくても羽は出せるのに、何で脱がなきゃいけないのさ?」  診察で服を脱ぐのはわかる。しかし、悪魔の身の内に秘める「力」を出せなどと、唐突に言う医者に眉をひそめる。  医者はいつもの無表情のまま、煙草を取り出して静かに火をつけた。 「おまえのその反応が見たかっただけだ。俺の趣味だとでも言わせたいのか、おまえは」 「ちょっと待ってよ。それ、服と羽と、どっちのこと言ってる?」  ひとまず、からかわれているのはよくわかった。「翼槞」なら動じないようなことで、悪魔が引っかかるのが面白いのだろう。  結局服は脱がずに、ファスナーの開いた部分から、簡単に聴診器を当てられただけだった。 「それじゃ、翼を出せ。十中八九、そいつらが不協和音を起こしてる」 「初めからそう言ってよ……にしたって、何でまた今更……」  医者は翼、悪魔は羽と言うように、現在悪魔の内には大きく二種類の「力」を封じている。  そんな様々な「力」を身に持てるのも、「力」に応じた四つの意識があった、「都合良く造られた」悪魔の特殊性だ。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加