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左の翼は光る透明の羽根の集まり。右の翼はコウモリのような羽が四つ連なったものを、医者の言う通り、背部に具現させる。
どちらもあまりに「力」が大きいので、それぞれ透明の珠と双角錐の黒い石を核にして、悪魔の体から僅かに分離させている。その核の石こそ、翼に「力」を流す源でもあった。
「……『黄輝』が動き始めてるな。今までうんともすんとも言わなかったのに、これは何の悪夢なんだ」
「え、まじで? オレも結局、封印するくらいしかなかったのに」
左の光る翼を「黄輝」、右の羽を「黒魔」と医者は呼び分けている。コウモリ状の「黒魔」が吸血鬼としての羽で、光る方の翼は、悪魔が相方と契約して得た媒介――
相方が持っていたが、危険でもあったものを、悪魔が半分預かった翼だった。
「おまえ――『汐音』なら、『黄輝』もいくらか使えるはずだ。翼槞がおまえに体を使わせるのは、そこら辺りが主因なんだろう」
「そうなの? ホントは翼槞の仕事だろ、それ」
「封印の『錠』だけで手一杯ってことだ。おまえは『黒魔』よりの人格だが、どちらの影響も受ける存在だからな」
神眼の医者はよく、「黄輝」を太陽に、「黒魔」を月に喩える。その太陽と月の双方に引きずられ、波打っている存在……だから「汐音」なのだろうと、何となく察する。
悪魔自身は、使ってみないとわからない「力」なので、医者の言う通りに使い道を考えようと思い始めていた。
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